カテゴリー: FreeCAD習得講座

【初心者向け】3D CAD「FreeCAD」の使い方をゼロから解説する完全ロードマップ。インストール方法から基本操作、スケッチの描き方、電子工作ケースの設計、3Dプリンターでの出力までを体系的に学べます。商用利用可能なスキルを身につけましょう。

  • FreeCADで文字入れ!ShapeStringでロゴやラベルを刻印する方法

    FreeCADで文字入れ!ShapeStringでロゴやラベルを刻印する方法

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    「自作したケースに、ポートの名前やON/OFFのラベルを入れたい」
    「世界に一つだけの証として、自分のロゴをデバイスに刻印したい」
    「FreeCADで文字を立体にする方法が難しくて、いつも挫折してしまう……」

    電子工作ケースの設計もいよいよ大詰めです。形が完璧に仕上がった後、最後にこだわりたいのが「文字入れ(マーキング)」です。文字やロゴが入るだけで、ただの「プラスチックの箱」は、一気に愛着の湧く「自分ブランドの製品」へと進化します。

    最新のFreeCAD 1.0.2では、文字を扱うための「ShapeString(シェイプストリング)」機能がより洗練され、配置やサイズ調整が以前よりも直感的に行えるようになりました。

    この記事では、FreeCAD 1.0.2の最新画面を使い、文字を自由に刻印(彫る)したり、浮き彫り(盛る)にしたりする方法を徹底解説します。日本語フォントの扱い方や、複雑なロゴ(SVG)の取り込み方までマスターして、あなたの作品をプロ級のクオリティへ引き上げましょう!


    1. 文字を立体化する「ShapeString」機能

    FreeCADで文字を扱う方法はいくつかありますが、3Dプリント用の立体的な文字を作るための標準的なツールが「ShapeString(シェイプストリング)」です。これは [Draft] ワークベンチの中に用意されています。

    一般的なワープロソフトの文字入力と大きく違う点は、ShapeStringで作られるのは「文字の輪郭データ」であるということです。このデータはスケッチと同じように扱えるため、後から [Part Design] ワークベンチに持ち込んで「押し出し」や「ポケット」加工を行うことができます。

    文字を立体化する基本的な流れは以下の通りです。

    • Step 1[Draft] で文字とフォントを指定する。
    • Step 2:文字の配置場所を決める。
    • Step 3[Part Design] で立体化する。

    一見すると「ワークベンチをまたぐのが面倒そう」と感じるかもしれませんが、慣れてしまえば数分で作業を完了できます。まずはこの「道具の役割」を理解しましょう。


    2. フォントファイルの指定と日本語対応

    ShapeStringを使い始めて多くの初心者が最初につまずくのが、「フォントの指定」です。FreeCADはシステムのフォントを自動で読み込んでくれないため、フォントファイル(.ttf や .otf)の場所を直接教えてあげる必要があります。

    2-1. フォントファイルの場所を探す

    WindowsやMacのパソコンには最初からフォントが入っていますが、その場所は隠れたフォルダにあります。事前に以下のパスをメモしておくとスムーズです。

    • WindowsC:\Windows\Fonts
    • macOS/Library/Fonts または /System/Library/Fonts

    2-2. 日本語を表示させるための条件

    FreeCADで日本語を刻印したい場合は、必ず日本語に対応したフォントを選択してください。英語専用のフォントを選ぶと、日本語を入力しても「□(トーフ)」になってしまいます。Googleが提供している Noto Sans JP などのフリーフォントを用意しておくと、文字化けの心配がなくおすすめです。

    💡 1.0.2のポイント:デフォルトフォントの設定
    毎回フォントを指定するのが面倒な場合は、[設定] > [Draft] > [テキス・寸法] から、ShapeStringで使用するデフォルトのフォントパスを設定しておくことができます。これを一度やっておくだけで、設計効率が劇的に上がります。


    3. 文字スケッチをケース表面に配置する

    文字のデータを生成したら、それをケースの「どの面」に表示させるかを決めます。FreeCAD 1.0.2では、文字を配置するための「アタッチメント」機能が非常に安定しています。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. ワークベンチを [Draft] に切り替えます。
    2. ツールバーの [ShapeStringを作成] アイコンをクリックします。
    3. タスクパネルで「文字列」を入力し、「フォントファイル」のパスを指定します。
    4. 3Dビュー上で、文字を置きたい面(ケースの天面など)を一度クリックして [OK] を押します。

    配置した直後は、文字が原点(0,0,0)に重なっていたり、向きが変だったりすることがあります。その場合は、モデルツリーからShapeStringを選択し、プロパティの [Placement][Map Mode] を調整して、面にピタッと張り付くように修正しましょう。これが「文字スケッチをケース表面に配置する」ための確実な方法です。


    4. 切り込み(刻印)と押し出し(エンボス)

    文字データが配置できたら、いよいよ立体化の工程です。Part Designワークベンチの [パッド][ポケット] を使用しますが、ここには「ShapeStringをボディーに認識させる」という、FreeCAD独自のルールがあります。

    4-1. 刻印(彫る)の手順

    文字をケースの表面からへこませる方法です。

    1. Part Designワークベンチで、作成したShapeStringをモデルツリーからドラッグ&ドロップして、対象の [Body] の中に放り込みます。
    2. ShapeStringを選択した状態で [ポケット] ツールをクリックします。
    3. 深さを 0.4mm 〜 0.6mm 程度に設定します。これ以上深くすると3Dプリント時に文字の形が崩れやすくなります。

    4-2. 浮き彫り(盛る)の手順

    文字を表面から飛び出させる方法です。

    1. 同様にShapeStringを選択し、[パッド] ツールをクリックします。
    2. 高さを 0.4mm 〜 0.8mm 程度にします。

    💡 注意:3Dプリントの限界
    あまりに細い文字や小さな文字(高さ3mm以下など)は、3Dプリンターのノズル径(通常0.4mm)では再現できず、埋まってしまうことがあります。「太めのフォント」を使い、文字の線幅が 0.5mm 以上になるように設計するのが成功の秘訣です。


    5. ロゴ画像(SVG)を取り込んで刻印する方法

    文字だけでなく、自分で描いたロゴやアイコンをケースに入れたい場合もあるでしょう。その際は「SVG(Scalable Vector Graphics)」形式のデータを使用します。

    SVG取り込みの手順

    1. Adobe IllustratorやInkscapeなどの描画ソフトでロゴを作成し、「SVG」形式で保存します。
    2. FreeCADの [ファイル] > [インポート] を選び、SVGファイルを選択します。
    3. インポート時のオプションで 「SVG as Geometry (Draft)」 を選択します。
    4. 読み込まれたロゴデータは、ShapeStringと同じように [Part Design] のボディー内に取り込んで立体化できます。

    文字よりも複雑な形状になることが多いため、読み込み後にエラー(面が閉じていない等)が出る場合があります。その際は [Draft] ワークベンチの [アップグレード] ツールを使って、線を結合させると解決することが多いです。


    よくあるトラブルと解決策

    • 「ShapeStringがボディーの中に移動できない」:ボディーをダブルクリックして「アクティブ」にしているか確認してください。
    • 「文字が大きすぎてケースからはみ出した」:ShapeStringのプロパティにある [Size] の数値を変更してください。1.0.2では数値を変更するだけでリアルタイムにプレビューが更新されます。
    • 「ポケット加工をするとエラーが出る」:フォントによっては、文字の線が重なっている(自己交差)ことがあります。別のフォントを試すか、[Draft] で修正を行う必要があります。

    6. まとめ

    今回は、作品のアイデンティティを確立する「文字入れとロゴ刻印」のテクニックを解説しました。

    • ShapeString[Draft] ワークベンチで作成し、フォントパスを正確に指定する。
    • 日本語を入れるなら、日本語対応のTTFフォントが必須。
    • ポケットは 0.5mm 程度の深さに留めるのが3Dプリントを綺麗に仕上げるコツ。
    • より自由な造形を求めるなら、SVGインポートを活用してオリジナルロゴを入れる。

    おめでとうございます!これで「電子工作ケースの設計」に必要なモデリング技術はほぼすべて習得しました。

    次回からは、これまで個別に作ってきた「ボトム」「トップ」「ボタン」「基板」といった複数のパーツを、画面上で一つに組み立てる「アセンブリ(組み立て確認)」のフェーズに入ります。設計ミスを印刷前に見破るプロの工程を楽しみにしていてください!

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  • FreeCADで通気口(ベント)作成!熱対策とデザイン性を両立する技

    FreeCADで通気口(ベント)作成!熱対策とデザイン性を両立する技

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    「自作の電子工作ケースを印刷したけど、中でマイコンが熱くなって誤動作してしまった……」
    「ただ穴を開けるだけじゃなくて、市販品みたいにかっこいいスリットを入れたい!」
    「3Dプリンター独特の『積層痕』が気になって、安っぽく見えてしまうのが悩み」

    電子工作ケースを設計する際、デザインと同じくらい重要なのが「熱対策」です。特に高性能なマイコンやモータードライバを使用する場合、密閉されたケース内では熱がこもりやすく、最悪の場合は部品が故障したり、熱でケース自体が変形したりすることもあります。

    最新のFreeCAD 1.0.2を使えば、パターン機能を駆使して機能的で美しい通気口(ベント)を一瞬で配置することが可能です。また、ちょっとした形状の工夫で、3Dプリンター製であることを感じさせない高級感のある仕上げにすることもできます。

    この記事では、ケースの信頼性と見た目のクオリティを同時に高める設計技法を徹底解説します。実用性と美学が融合した、理想の筐体づくりに挑戦しましょう!


    1. 電子機器に必須の「熱対策」

    電子工作で使用するマイコン基板(ArduinoやRaspberry Piなど)は、計算処理を行う過程で熱を発生させます。3Dプリンターで主流のPLA樹脂は熱に弱く、60℃程度で柔らかくなり始めるため、ケース内部の温度上昇は物理的な歪みにも直結します。

    通気口を設けるべき理由は主に以下の3つです。

    • 動作の安定化:過熱によるCPUの処理速度低下(サーマルスロットリング)を防ぎます。
    • 部品の長寿命化:コンデンサなどの部品は高温下では寿命が著しく短くなります。
    • 筐体の保護:内部温度を樹脂の耐熱温度以下に保ち、ケースの変形を防ぎます。

    通気口の設計では、「空気の入り口(吸気)」と「出口(排気)」を対角線上に配置するのが基本です。温かい空気は上に向かう性質があるため、ケースの底面付近と上面(または側面の上部)に穴を設けることで、自然な空気の流れ(煙突効果)を生み出すことができます。


    2. スリット型・メッシュ型の通気口作成

    FreeCAD 1.0.2で通気口をモデリングする場合、大きく分けて2つのデザインスタイルがあります。

    2-1. スリット型ベント

    細長い溝を並べるスタイルです。オーディオ機器やサーバー筐体によく見られるデザインで、ホコリが入りにくく、特定の方向からの視線を遮る効果もあります。モデリングでは、[スロットを作成] ツールで一つの溝を描き、それを横に並べることで作成します。

    2-2. メッシュ型(ハニカム)ベント

    六角形や円形をハチの巣状に並べるスタイルです。開口面積を広く取れるため冷却効率が高く、強度も維持しやすいのが特徴です。第19回で学んだハニカム構造の知識を応用し、多角形ツールで「種」となる六角形を描くところから始めます。

    どちらのスタイルを選ぶにしても、「穴の大きさ」には注意が必要です。あまりに穴が小さすぎると、3Dプリンターのノズルが細部を再現できず、穴が埋まってしまうことがあります。スリット幅は 1.5mm以上、メッシュの間隔は 1.0mm以上 を目安に設計しましょう。


    3. パターン機能を使った効率的な穴あけ

    通気口の穴を一つひとつ手作業でスケッチするのは非効率です。FreeCAD 1.0.2で進化した「直線状パターン」機能をフル活用しましょう。効率的な手順は以下の通りです。

    1. スケッチの作成:ケースの面に [スケッチを作成] し、最初の「一つの穴」だけを完璧に拘束して描きます。
    2. ポケット加工:スケッチを [閉じる] し、[ポケット] で貫通させます。
    3. パターンの実行:作成された [Pocket] フィーチャーを選択し、[直線状パターンを作成] をクリックします。
    4. パラメータ調整:1.0.2のタスクパネルで「方向」を指定し、「長さ」と「出現数」を入力します。

    💡 ヒント / 注意点
    もし縦横のグリッド状に並べたい場合は、一度作成した [LinearPattern] を選択した状態でもう一度 [直線状パターンを作成] を実行してください。これで「パターンのパターン」が作られ、広範囲を一瞬で加工できます。


    4. 面取りとフィレットで外観グレードアップ

    ただの四角い箱に通気口を開けただけでは、まだ「試作品」の域を出ません。製品としての風格を出すためには、エッジの仕上げにこだわりましょう。

    4-1. 大胆な面取りによるフォルムの強調

    ケースの四隅のエッジに対し、大胆に 5mm 程度の [面取り (Chamfer)] または [フィレット (Fillet)] を適用します。これにより、光がエッジで反射し、立体感が際立ちます。

    4-2. スリットへの微細な装飾

    通気口の穴一つひとつに対しても、わずかな [面取り] を加えることができます。穴の縁を 0.3mm ほど面取りするだけで、安っぽい「切りっぱなしの穴」から「意匠設計されたベント」へと昇華します。3Dプリンターで出力する際も、この微小な斜面があることで、樹脂の垂れ(サギング)を防ぐ実用的なメリットもあります。


    5. 3Dプリントの積層痕を目立たなくする工夫

    家庭用3Dプリンター(FDM方式)の最大の課題は、横に走る積層痕(レイヤーライン)です。これを完全に消すことは難しいですが、設計の力で目立たなくすることは可能です。

    5-1. ラインデザインの導入

    あえてケースの表面に、積層方向に合わせた「溝(ライン)」をモデリングしておきます。すると、本来ノイズだった積層痕がデザインの一部として馴染み、視覚的に目立たなくなります。

    5-2. 勾配(傾斜)の効果

    垂直な壁面よりも、わずかに傾斜(テーパー)がついた壁面の方が、積層が規則的に並ぶため美しく見えます。FreeCAD 1.0.2の [抜き勾配 (Draft)] ツールを使い、側面に 1〜3度 程度の角度をつけるだけで、プロが金型で作ったような質感に近づきます。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:パターンを実行すると「ボディーと交差していません」とエラーが出る。
    A:コピーされた穴がケースの端からはみ出している可能性があります。出現数や間隔の数値をスプレッドシート等で微調整し、すべての穴が壁面の範囲内に収まるようにしてください。

    Q:複雑な穴あけをした後、PCの動作が非常に重くなった。
    A:FreeCAD 1.0.2は高速化されていますが、数千個単位のパターンは負荷がかかります。作業中は [表示] > [表示モード] > [フラットライン][ワイヤーフレーム] に切り替えると、描画負荷を軽減できます。


    6. まとめ

    • 熱対策はケース設計における最優先事項であり、吸気と排気の流れを考慮する。
    • 直線状パターンを駆使すれば、複雑なスリットやメッシュを一瞬で作成できる。
    • 面取りとフィレットのひと手間で、試作品から製品クオリティへ昇華させる。
    • 積層痕は、あえてラインを入れるなどの意匠設計でカモフラージュする。

    次回は、デバイスの顔となるロゴやラベルを刻印する「FreeCADで文字入れ!ShapeStringでロゴやラベルを刻印する方法」を解説します。自分ブランドのオリジナルデバイスを完成させるための、最後の一歩です。お楽しみに!

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  • 押しやすいボタンパーツを自作!FreeCADでタクトスイッチ用設計

    押しやすいボタンパーツを自作!FreeCADでタクトスイッチ用設計

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    「基板をケースに入れたら、タクトスイッチが奥まってしまって指が届かない……」
    「ケースに穴を開けただけだと、スイッチが見えてしまって見た目が格好悪い」
    「自作のボタンを作ってみたけど、ケースの中で引っかかって戻ってこない!」

    電子工作ケースの設計において、最後の完成度を左右するのが「ボタン」の品質です。基板に実装された小さなタクトスイッチを、ケースの外から「パチッ」と気持ちよく押せるようにするためには、延長ボタンパーツの設計が欠かせません。

    最新のFreeCAD 1.0.2では、スプレッドシートを使った変数管理により、0.1mm単位の微調整が必要なボタン設計も非常に効率的に行えるようになりました。

    この記事では、ケースから外れず、かつスムーズに動作する「タクトスイッチ ボタン 自作」のノウハウを徹底解説します。市販品のようなクリック感を目指して、一緒に設計を進めましょう!


    1. ボタンパーツが必要な理由

    電子工作でよく使われる「タクトスイッチ」は、高さが数mmしかありません。一方で、基板をボスで浮かせ、肉厚のあるケースに収めると、スイッチの先端はケースの表面からかなり深い位置になってしまいます。

    これを解決するのが「延長ボタン(プッシュボタン)」です。延長ボタンを設けるメリットは以下の3点です。

    • 操作性の向上:指の腹で楽にスイッチを押せるようになります。
    • 基板の保護:指が直接基板に触れないため、静電気や無理な力による故障を防げます。
    • デザイン性:ケースの色や形に合わせたボタンを作ることで、一気に「製品感」が出ます。

    設計のコツは、ボタンを「ケースに固定する」のではなく、「ケースの穴の中に浮かせて保持する」という考え方にあります。


    2. ボタン穴とボタン本体のクリアランス

    ボタンをスムーズに動かすために最も重要なのが、第22回でも学んだクリアランス(隙間)の設定です。ここが不適切だと、ボタンが穴の中でスタックして戻ってこなくなります。

    推奨される隙間の数値

    FreeCAD 1.0.2のスプレッドシートに、以下の数値を設定しましょう。

    項目推奨値理由
    ボタンと穴の隙間0.3mm 〜 0.5mm3Dプリンターの「造形太り」を考慮し、摩擦を最小限にします。
    ボタンのストローク余裕0.5mm 〜 1.0mmスイッチの押し込み量(約0.25mm)より少し多めに遊びを作ります。

    FreeCADの [数式エディタ] を使い、穴の径 = ボタンの径 + (clearance * 2) と定義することで、ボタンの大きさを変えても常に最適な隙間が維持されるようになります。


    3. 抜け止め(フランジ)構造の設計

    ただの円柱を穴に入れるだけでは、ケースを逆さまにした時にボタンがポロッと落ちてしまいます。これを防ぐために、ボタンの底部に「フランジ(つば)」を設けます。

    フランジ設計のポイント

    1. 「T字型」にする:ボタンの底面を一回り大きく(半径+1.5mm程度)設計します。
    2. ケース内側の座グリ:ケースの裏側にも、このフランジが収まるための「逃げ(凹み)」を [ポケット] 機能で作ります。

    これにより、ボタンは「内側からは入るが、外側(指で押す方向)には飛び出さない」という状態になります。まさにパズルのような構造です。


    4. タクトスイッチとの接触面の工夫

    「押し心地」を良くするためには、ボタンの裏側、つまりスイッチと接触する面の形状にもこだわりましょう。

    • 平坦にする:スイッチの頭を確実に捉えるよう、接触面はフラットにします。
    • 中心を合わせる:FreeCADの [外部参照] (X) を使い、基板上のスイッチの真上にボタンの中心が来るよう厳密に拘束します。
    • 予圧(プリロード)に注意:ボタンが常にスイッチを押しっぱなしの状態(隙間ゼロ)だと、勝手に反応してしまいます。必ず 0.2mm 程度の「遊び」を設けてください。

    💡 プロの豆知識
    ボタンの上面(指で触れる面)をわずかに [凹ませる] と、指の収まりが良くなり、高級感のある操作感が生まれます。


    5. 3Dプリント時の配置方向(サポート対策)

    ボタンのような小さなパーツは、印刷する向きによって仕上がりが激変します。

    推奨されるプリント方向

    「指で触れる面を下にして」印刷するのがおすすめです。

    • 理由1:ベッドに接する面が最も滑らかに仕上がります。
    • 理由2:フランジ部分のオーバーハングを最小限に抑えられ、サポート材を減らすことができます。

    FreeCAD 1.0.2で書き出した後にスライサーソフト(Curaなど)で回転させ、100%のインフィルで印刷すると、適度な重みのある使いやすいボタンになります。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:ボタンを押してもスイッチまで届かない
    A:ボスの高さか、ボタンのアームの長さが足りません。FreeCADのスプレッドシートでボタンの全高を 1mm ずつ増やして再計算(F5)し、最適な長さを探りましょう。

    Q:ボタンが穴の中で斜めになって引っかかる
    A:ボタンの「ガイド部分(円柱)」が短すぎます。ガイドの長さをボタン径の 1.5倍 以上に設定すると、姿勢が安定してスムーズに動くようになります。


    6. まとめ

    今回は、デバイスの顔となる「ボタンパーツ」の設計手法を学びました。

    • 延長ボタンは基板とケースの距離を埋め、操作性を高める。
    • 0.3mm以上のクリアランスが、スムーズな動作には不可欠。
    • フランジ構造を設けることで、ボタンの脱落を物理的に防ぐ。
    • 逆さまのプリントで、指先の感触を最高に仕上げる。

    ボタンが「カチッ」と決まると、自作ケースの満足度は一気に跳ね上がります!

    次回は、電子工作ケースにつきものの「熱」の問題を解決する「通気口(ベント)の作成」について解説します。見た目と実用性を両立する、パターン機能の応用技を使いこなしましょう!

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  • FreeCADでスナップフィットを実装!パチンと閉まる蓋の作り方

    FreeCADでスナップフィットを実装!パチンと閉まる蓋の作り方

    「前回の記事でスナップフィットの理論は分かったけど、実際にFreeCADでどう描けばいいの?」
    「複雑なツメの形状を正確にモデリングする自信がない……」
    「印刷してみたら、ツメが本体に食い込んでいて蓋が閉まらなかった!」

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    理論を学ぶのと、それをCAD上で形にするのとでは、また別のテクニックが必要です。特にFreeCAD 1.0.2では、新しくなった操作フローを正しく理解していないと、意図した場所に拘束をかけられず苦労することがあります。

    この記事では、電子工作ケースの総仕上げとして、「パチン」と心地よい音を立てて閉まるスナップフィットを実装する手順をステップバイステップで解説します。本体と蓋が完全に噛み合うための精密なモデリング手法をマスターしましょう。


    1. 蓋側に「ツメ」のスケッチを描く

    スナップフィットのモデリングで最も重要なのは、「どの平面にスケッチを描くか」です。蓋の表面ではなく、蓋を横から見た「断面」にスケッチを描くのが正解です。

    FreeCAD 1.0.2の [Part Design] ワークベンチで、蓋(Lidボディー)をアクティブにした状態で作業を開始します。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. 蓋の中央を通る平面(例:XZ_Plane)を選択し、[スケッチを作成] をクリックします。
    2. 背景にある本体(ボトム)と蓋の境界線が見えにくい場合は、ツールバーの [セクション表示] アイコンをクリックして断面を強調します。
    3. [外部形状へのリンクを作成] (X) ツールを選択し、蓋の下面と側面のカドを参照線(マゼンタ色の線)として取り込みます。
    4. [ポリライン] ツールを使い、アームとフック(ツメ)の輪郭を「逆L字型」に描きます。前回の理論に基づき、根元を少し太く、先端を細くするテーパー形状を意識しましょう。

    💡 ヒント / 注意点
    この段階では形はガタガタで構いません。後ほど幾何拘束と寸法拘束で完璧に整えます。


    2. 押し出しと面取りでツメ形状を作る

    スケッチを「完全拘束(緑色)」にしたら、次はこの薄い断面図を横方向に広げて「実体」にします。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. スケッチを [閉じる] で終了します。
    2. モデルツリーで今描いたスケッチを選択し、[パッド] ツールをクリックします。
    3. タスクパネルで「タイプ」を [対称平面 (Symmetric to plane)] に変更します。これにより、スケッチを中心に左右均等にツメが作られます。
    4. 「長さ」にツメの幅(例:6.0mm)を入力し、[OK] を押します。
    5. ツメの先端の角を選択し、[面取り (Chamfer)]0.5mm ほど適用します。これが「進入角」となり、蓋を閉める時のガイドになります。

    これで蓋側の「オス」の形状が完成しました。次に、これを受け止める本体側の「メス」を加工します。


    3. 本体側に「受け口」の溝を掘る

    ツメが引っかかるための「溝」を本体側に作ります。ここでも 「現物合わせの設計」 が基本です。本体をいちいち採寸するのではなく、蓋のツメの位置を基準にして削り取ります。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. モデルツリーで 本体(Bottomボディー) をダブルクリックしてアクティブにします。
    2. ツメが当たる内壁の面を選択し、[スケッチを作成] をクリックします。
    3. [外部形状へのリンクを作成] (X) を使い、蓋側のツメの先端エッジ を参照線として取り込みます。
    4. ツメの先端が入り込むための [長方形] を描きます。
    5. この長方形のサイズは、ツメの先端よりも 全方向に 0.2mm 大きく 拘束してください。
    6. スケッチを閉じ、[ポケット] ツールで溝を掘ります。貫通させても良いですし、外側から見えないように 1.0mm 程度の深さで止めても綺麗です。

    4. 噛み合わせ確認と公差の最終調整

    「スナップフィット 作り方 FreeCAD」において、最も失敗しやすいのが 「きつすぎて入らない」 問題です。FreeCAD 1.0.2の便利な検証機能を使いましょう。

    クリアランスの黄金ルール

    第22回で設定したスプレッドシートの変数 gap を活用します。アームと壁の間には必ず 0.3mm 〜 0.4mm の隙間が必要です。

    VB
    // 数式エディタでの入力例
    溝の幅 = Spreadsheet.snap_w + (Spreadsheet.gap * 2)
    溝の深さ = Spreadsheet.hook_h + Spreadsheet.gap

    断面表示でのチェック

    1. メニューバーの [表示] > [クリッピングプレーン] を開きます。
    2. スライダーを動かして、ツメの中央でカットします。
    3. [Ctrl] + マウスホイール で拡大し、ツメと溝の間に均一な「白い隙間」があることを確認してください。

    5. 試作プリントと修正のサイクル

    設計が完璧に見えても、実際に3Dプリンターで出力すると「音が鈍い」「外れやすい」といった微調整が必要になることが多々あります。最初から大きなケースを印刷してはいけません。

    効率的な改善フロー

    1. 部分印刷:スナップフィットの周辺だけを切り出した小さなパーツ(テストピース)を作成して印刷します。
    2. 感触を確認:指で押してみて、「しなり」が十分か、ツメが折れないかを確認します。
    3. 変数を修正
      • 硬すぎる場合:スプレッドシートで snap_thickness(厚み)を 0.1mm 薄くする。
      • 折れそうな場合:snap_length(長さ)を長くして負担を逃がす。
    4. 再計算 (F5):数値を直すだけで、FreeCADが自動的に形状を更新してくれます。

    よくあるトラブルと解決策

    Q:スケッチを閉じたらツメが消えてしまった!
    A:モデルツリーで蓋のボディー(Lid)が非表示(灰色)になっていませんか?スペースキーを押して表示状態を切り替えてください。また、別のボディーを編集している最中にスケッチを描くと、意図しない階層にスケッチが作られてしまうことがあります。必ず「今どのボディーを編集しているか」を意識しましょう。

    Q:ツメを押し出そうとすると「ソリッドが分断されています」と出る。
    A:ツメのスケッチが蓋のベース部分と離れている可能性があります。外部参照した線に対して、アームの端点を確実に [一致拘束] させてください。


    6. まとめ

    今回は、ケース設計の醍醐味である「スナップフィットの実装」について解説しました。

    • ツメの設計は「蓋の断面」にスケッチを描くのが基本。
    • [対称平面] での押し出しを使い、中心基準で配置する。
    • 本体側の溝は、ツメを外部参照してクリアランス(0.2mm〜)を設ける。
    • スプレッドシート変数を使い、試作と修正のサイクルを高速化する。

    これで、ネジがなくてもカチッと閉まるプロ仕様のケースが形になりました!

    次回は、ケースの外側から中のスイッチを操作するための「押しやすいボタンパーツの設計」に挑戦します。スイッチのストロークを計算に入れた、さらに高度な可動パーツの設計を学びましょう。お楽しみに!

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  • ネジ不要の固定!3Dプリンター向けスナップフィット設計の理論

    ネジ不要の固定!3Dプリンター向けスナップフィット設計の理論

    FreeCAD
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    「ケースの蓋をネジで止めるのは面倒だし、見た目もスマートじゃない……」
    「市販のリモコンみたいに、パチンとはまる蓋を作りたい!」
    「自作のツメを作ってみたけど、一回はめただけでポッキリ折れてしまった」

    3Dプリンター(FDM方式)でのモノづくりにおいて、最もエンジニアの腕の見せ所となるのが、この「スナップフィット設計」です。ネジや接着剤を使わず、樹脂自体の「しなり」を利用して固定するこの仕組みは、部品点数を減らすだけでなく、製品としての完成度を劇的に高めてくれます。

    しかし、3Dプリンターで出力するスナップフィットには、金型で作る工業製品とは異なる「特有のルール」が存在します。このルールを知らずに設計すると、積層の剥離で簡単に折れたり、一度はめたら二度と外れなかったりといった失敗を招きます。

    この記事では、最新のFreeCAD 1.0.2で実装する前段階として、絶対に知っておくべき「折れない・外れない・心地よい」スナップフィットの設計理論を徹底解説します。


    1. スナップフィットの仕組みとメリット

    スナップフィットとは、部品の一部を一時的に弾性変形(しならせる)させ、相手側の凹凸にパチンとはめ込む固定方法です。電池蓋やペンのキャップなど、身の回りのプラスチック製品の多くに採用されています。

    3Dプリンターでこの構造を採用するメリットは以下の通りです。

    • 部品コストの削減:ネジやナットを買う必要がなくなります。
    • 組立の効率化:工具なしで、一瞬で組み立て・分解ができます。
    • デザインの洗練:外側にネジ頭が見えないため、見た目が非常にすっきりします。

    ただし、FDM方式の3Dプリンターで使う「PLA」や「PETG」は、金属ほど柔軟ではありません。材料の特性を理解し、無理な力がかからない形状を設計することが成功の鍵となります。


    2. 3Dプリンター向け形状(積層方向の考慮)

    3Dプリンターでスナップフィットを設計する際、最も重要なのが「積層方向」です。どんなに計算が正しくても、プリントの向きが悪いとツメは一瞬で折れます。

    積層面は「弱点」である

    3Dプリント品は、層と層の接着面が最も脆くなります。ツメを「垂直」に立てて印刷すると、しなる力が加わった際、層の間から剥がれるようにポッキリと折れます(層間剥離)。

    折れないための配置ルール

    • 繊維の向きを揃える:ツメの長さ方向がプリントの横方向(X-Y平面)になるように配置すると、樹脂の「糸」が途切れずに繋がるため、非常に強靭になります。
    • フィレットによる補強:ツメの根元には必ず [フィレット] をかけましょう。角を丸めるだけで、力が一点に集中(応力集中)するのを防ぎ、折れるリスクを大幅に下げられます。

    3. 必要な「しなり量」とアームの長さ

    スナップフィットの基本は「カンチレバー(片持ち梁)」という構造です。この「アームの長さ」と「ツメの高さ」には、黄金比が存在します。

    「長く、しなやかに」作る

    樹脂を折らずにしならせるためには、十分な長さが必要です。 一般的なPLA樹脂の場合、「アームの長さは、ツメの高さの10倍以上」にするのが安全圏です。例えば、0.5mmの引っかかりを作りたいなら、しなる部分は5mm以上の長さを確保します。

    工学的な詳細を知りたい方は、樹脂メーカーの技術資料などを参考にしてください。


    4. カンチレバー(片持ち梁)型の設計手順

    FreeCAD 1.0.2で設計する際は、以下の3つの要素を意識してスケッチを描きます。

    ① 進入角(挿入しやすさ)

    ツメが当たる瞬間の斜面の角度です。通常は 30度〜45度 に設定します。角度を緩くするほど、軽い力で「パチン」とはまります。

    ② 保持角(抜けにくさ)

    はまった後の、戻る側の角度です。

    • 外したくない場合:90度(直角)にします。
    • メンテナンスで外したい場合:45度程度に設定すれば、引っ張ることで再びしなりが発生し、外すことができます。

    ③ アームのテーパー

    アーム(支柱)の厚みを、根元を太く、先端を細くする「テーパー形状」にすると、負荷が全体に分散されるため、より折れにくくなります。FreeCADのスプレッドシートでこれらの数値を管理すると、微調整が非常に楽になります。


    5. 失敗しないためのアンダーカット対策

    3Dプリンターには「アンダーカット(逆勾配)」に弱いという特性があります。スナップフィットのツメ部分は、まさに空中に浮いた形状になりがちです。

    サポート材を使わない工夫

    スナップフィットの中にサポート材が入り込んでしまうと、除去が非常に困難になり、ツメが動かなくなります。これを避けるためには、「45度ルール」を適用します。

    ツメの突き出し部分を直角にせず、下側を45度の斜面にします。FreeCAD 1.0.2なら、スケッチ内で [角度拘束] を使って 45度を指定するだけで、サポート不要で綺麗に印刷できるツメが完成します。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:ツメが硬すぎて、はめようとすると折れてしまう

    A:アームが短すぎるか、厚みが厚すぎます。FreeCADのスプレッドシートでアームの長さを 2mm ほど長くするか、厚みを 0.2mm 薄くして「しなり」を大きくしましょう。

    Q:プリント後にツメが固着して動かない

    A:クリアランス(隙間)が足りません。アームとケース壁面の間に、少なくとも 0.3mm 〜 0.4mm の隙間を設けるように設計を見直してください。


    5. まとめ

    • スナップフィットは樹脂の弾性を利用した、ネジ不要のスマートな固定法。
    • 積層方向を「繊維が繋がる向き」に配置するのが折れないための鉄則。
    • アームの長さを十分に確保し(ツメ高さの10倍)、根元をフィレットで補強する。
    • 45度の斜面を設けることで、サポート材なしの綺麗な出力を実現する。

    理論が分かれば、あとは形にするだけです。理論に基づいた設計は、あなたの作品を「壊れにくい一生モノの資産」に変えてくれます。

    次回は、いよいよFreeCAD 1.0.2を操作して、実際に「パチンと閉まるスナップフィット付きの蓋」をモデリングします。今回の理論をどう図面に落とし込むのか、じっくり解説します。お楽しみに!

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  • ズレないケース蓋の設計!FreeCADでリップ(インロー)構造を作る

    ズレないケース蓋の設計!FreeCADでリップ(インロー)構造を作る

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    「3Dプリンターでケースを作ったけど、蓋を乗せるだけだと横に滑ってズレてしまう……」
    「ネジを使わずに、パチンとはまるような精密な蓋を作りたい」
    「市販の製品みたいに、段差があってカチッと噛み合う構造はどうやって設計するの?」

    電子工作ケースの設計において、ボトム(本体)とトップ(蓋)を組み合わせる際、最も重要なのが「嵌合(かんごう)」の設計です。ただ平らな面同士を合わせるだけでは、少しの衝撃で蓋が外れたり、見た目が安っぽくなったりしてしまいます。

    そこで役立つのが「リップ構造(インロー構造)」です。これは、一方に凸、もう一方に凹の段差を設けることで、左右前後のズレを物理的にロックする設計手法です。

    この記事では、最新のFreeCAD 1.0.2を使い、本体の形状を正確に引き継いで「絶対にズレない蓋」を作る手順を詳しく解説します。このスキルを習得すれば、あなたの作品のクオリティは一気に「製品レベル」へと引き上げられます!


    1. 本体(ボトム)を基準に蓋をスケッチする

    精度の高い蓋を作るための鉄則は、「本体の寸法をいちいち測り直さない」ことです。第17回で学んだ「外部参照」を使い、本体の外形線をそのままスケッチに取り込みましょう。

    FreeCAD 1.0.2のワークフローでは、まず蓋専用の新しい「ボディー」を作成することから始めます。これにより、本体と蓋を別々の部品として管理でき、3Dプリント時のデータ出力もスムーズになります。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. [Part Design] ワークベンチで [ボディーを作成] をクリックし、名前を「Lid」などに変更します。
    2. 本体(ボトム)の「上面(フチの部分)」を選択し、[スケッチを作成] をクリックします。
    3. ツールバーの [外部形状へのリンクを作成](ショートカット X キー)を選択します。
    4. 本体の外周を構成する4つの辺を順にクリックし、マゼンタ色(紫色)の参照線として取り込みます。
    5. [長方形を作成] ツールで四角を描き、4つの角を紫色の参照線の頂点に対して [一致拘束] させます。

    💡 ヒント / 注意点
    FreeCAD 1.0.2では、外部参照ツールを選択した際、マウスカーソルの横にアイコンが表示されます。辺を正確に捉えると線が赤く強調されるので、確実に「Edge(辺)」を選択できているか確認しましょう。


    2. 蓋のベース形状の押し出し

    スケッチができたら、蓋に厚みを持たせます。ここで重要なのは、押し出しの「方向」です。

    通常、本体の上面を選択してスケッチを描いた場合、そのまま押し出すと本体の内部に向かって(下向きに)形が作られてしまいます。蓋を作る場合は、本体の外側(上向き)へ向かうように設定を調整します。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. スケッチ編集を [閉じる] で終了します。
    2. ツールバーの [パッド] をクリックします。
    3. タスクパネルで「長さ」に蓋の厚み(例:2.0mm)を入力します。
    4. もしプレビューで蓋が本体の中に埋もれている場合は、[逆方向 (Reversed)] のチェックを切り替えてください。
    5. [OK] を押して確定します。

    これで、本体の上にピッタリと重なる平らな板状の蓋が完成しました。しかし、まだこの状態では横に滑ってしまうため、いよいよ「インロー構造」を追加していきます。


    3. ズレ防止の基本「リップ(インロー)」とは

    「インロー構造」とは、日本の伝統的な「印籠(いんろう)」が語源で、機械設計では「嵌合(かんごう)によって位置を決める構造」を指します。英語では「Lip and Groove(リップ・アンド・グルーブ)」とも呼ばれます。

    今回作成するのは、蓋の裏側に「本体の内壁にぴったりはまる突起」を作る手法です。これにより、蓋を閉めた時に壁同士が重なり、横方向の力がかかってもズレなくなります。

    インロー構造を設けるメリット

    • 位置決めの正確さ:ネジを締める際も、あらかじめ位置が固定されるためスムーズに作業できます。
    • 密閉性の向上:重なり合う部分ができることで、中の配線が外から見えにくくなり、埃などの侵入も防げます。
    • 外観の美しさ:本体と蓋の境界線がガタつかず、一本の綺麗なラインに見えるようになります。

    産業製品の多くは、この「インロー構造 設計」を基本として組み立てられています。


    4. オフセットを使った嵌合部のクリアランス調整

    インロー構造を作る際の最大の落とし穴は、「隙間(クリアランス)ゼロ」で設計してしまうことです。第22回でも触れた通り、3Dプリンターには造形誤差があるため、0.2mm程度の「ゆとり」がないと、きつすぎて蓋が入りません。

    FreeCAD 1.0.2でこの「ゆとり」を最も簡単に作る方法が、スケッチャーの「オフセット」ツールです。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. 蓋の「裏面(本体と接する面)」を選択して [スケッチを作成] をクリックします。
    2. [外部形状へのリンクを作成] (X) で、本体の内壁の辺(4辺)を参照線として取り込みます。
    3. ツールバーの [オフセットを作成] アイコン(ショートカット Ctrl+Shift+O、または1.0.2の新アイコン:二重線のマーク)を選択します。
    4. 取り込んだ参照線(マゼンタ色)をクリックし、マウスを内側へ動かして、一回り小さい四角形を作成します。
    5. 寸法拘束(数式エディタ f(x))を使い、オフセット距離を Spreadsheet.gap(例:0.2mm)に設定します。
    6. さらに内側に、リップの厚み(例:1.5mm)となるもう一つのオフセット線を描きます。
    7. スケッチを [閉じる] し、[パッド] で 2.0mm ほど押し出して、突起(リップ)を完成させます。

    この「オフセットによるクリアランス設計」を徹底することで、ヤスリで削ることなく「パチン」と一発でハマる高品質なケースが完成します。


    5. 断面表示での噛み合わせチェック

    設計が完了したら、印刷前に必ず「断面」を確認しましょう。表面から見ているだけでは気づかない、内部のぶつかり(干渉)を発見するためです。

    FreeCAD 1.0.2では、[表示] > [クリッピングプレーン] 機能を活用して、モデルを真っ二つに切った状態で観察することができます。

    確認すべきポイント

    チェック項目理想の状態修正のヒント
    水平方向の隙間全周に 0.2mm 程度の空間があるgap 変数の値を調整
    垂直方向の余裕リップの先端が底にぶつかっていないリップの押し出し長さを短くする
    角の干渉内側の角同士がぶつかっていないリップの角に小さなフィレットを追加

    断面表示を確認して「これならハマる!」という確信が持てたら、設計は成功です。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:オフセットツールを使ったらスケッチが真っ赤になった!
    A:これは「過剰拘束」です。1.0.2のオフセット機能は便利ですが、時に不要な水平・垂直拘束を自動で付けてしまうことがあります。画面左下のメッセージ欄にある「冗長な拘束」というリンクをクリックし、不要な拘束を削除しましょう。

    Q:3Dプリントしたら蓋が反って浮いてしまう。
    A:大きな面積の蓋は冷却時に反りやすいです。インロー構造のリップの高さを 3mm 程度まで高くすると、リップ自体が「梁(はり)」の役割を果たし、蓋の反りを物理的に抑え込む効果も期待できます。


    6. まとめ

    • 外部参照 (X) を使って、本体のフチと完全に一致する蓋の下書きを作る。
    • インロー構造を追加することで、ネジなしでもズレない物理的ロックを実現する。
    • オフセットツールとスプレッドシート変数を使い、0.1mm 単位で隙間を管理する。
    • 断面表示での最終確認が、印刷失敗を防ぐプロのルーティン。

    これで、外見も機能もプロ仕様のケースが形になってきました。しかし、まだこのままでは「逆さまにすると蓋が落ちてしまう」かもしれません。

    次回は、ネジを使わずにパチンと蓋を固定する「スナップフィット設計」の理論について解説します。樹脂の「しなり」を利用した高度な造形に挑戦しましょう。お楽しみに!

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  • FreeCADでケース側面に穴あけ!USBポートやスイッチ用の加工法

    FreeCADでケース側面に穴あけ!USBポートやスイッチ用の加工法

    「ケースの底面には部品を固定できたけど、横の壁にUSBポートの穴を開けるにはどうすればいいの?」
    「3Dプリンターでケースを作ったら、壁が厚すぎてUSBケーブルが奥まで刺さらなかった……」
    「斜めの壁にスイッチ用の穴をきれいに配置したい!」

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    電子工作ケースの自作において、最大の難所の一つが「側面への加工」です。これまでの演習では主にXY平面(底面)にスケッチを描いてきましたが、実際のデバイスには横からケーブルを挿したり、側面のスイッチを操作したりする機能が欠かせません。

    最新のFreeCAD 1.0.2では、こうした側面へのスケッチを補助する「データム平面」などの機能が非常に扱いやすくなっています。しかし、ただ穴を開けるだけでは、ケースの厚みが邪魔をしてコネクタが正常に動作しないといった失敗も多いのが実情です。

    この記事では、FreeCAD 1.0.2を使った「側面 穴あけ」の確実な手順と、3Dプリント後に「入らない・刺さらない」を防ぐためのプロの設計テクニックを詳しく解説します。


    1. 側面にスケッチを描くための準備

    FreeCADで穴を開けるには、まず「どの面に絵を描くか」を決めなければなりません。側面に穴を開ける方法は大きく分けて2つあります。それは、「立体の面を直接選ぶ方法」と、「データム平面(基準面)を作る方法」です。

    1-1. 立体の面を選択してスケッチを開始する

    最も簡単な方法は、すでに作成してあるケースの「外壁」をクリックして選択し、そのまま [スケッチを作成] アイコンをクリックする方法です。平らな壁であれば、これだけでその面にスケッチを描くことができます。

    1-2. データム平面を活用する(推奨)

    しかし、より堅牢でプロレベルの設計を目指すなら「データム平面(Datum Plane)」の使用を強くおすすめします。データム平面とは、空中に配置できる「仮想的な作業机」のようなものです。

    • 形状変更に強い:立体の形状を後で大きく変えても、スケッチがエラー(参照消失)になりにくい。
    • 自由な配置:壁面から少し離れた位置にスケッチを描き、そこから「逆方向」に削るなどの柔軟な設計ができる。
    • 斜め対応:角度のついた壁に対しても、正確な角度で平面を設置できる。

    FreeCAD 1.0.2でデータム平面を作成するには、[Part Design] ワークベンチのツールバーにある [データム平面を作成] アイコンをクリックします。基準となる座標軸や面を選択し、アタッチメントモードで位置を微調整することで、自由な位置にスケッチの下地を作ることができます。


    2. コネクタ形状に合わせた穴あけ加工

    側面への平面が用意できたら、次は実際の穴の形をスケッチしていきます。ここで重要なのは、「コネクタのサイズ+α」の余裕(クリアランス)を持たせることです。

    2-1. USBポートの標準的なクリアランス

    例えば、USB Type-Cポートの穴を開ける場合、基板上のコネクタ実寸が「幅9.0mm、高さ3.5mm」だったとしても、その通りに穴を開けてはいけません。3Dプリンターの造形太りや、ユーザーがケーブルを挿す時の手の震えを考慮する必要があります。

    コネクタ種類実寸目安(幅×高)設計穴サイズ(推奨)クリアランスの考え方
    USB Type-C9.0mm × 3.5mm11.0mm × 5.5mm上下左右に1mm程度の遊びを確保。
    Micro USB8.0mm × 3.0mm10.0mm × 5.0mm挿し込み時の中心のズレを許容。
    DCジャック直径 8.0mm直径 9.5mm回転や傾きを考慮し、大きめに設定。

    2-2. 外部参照を使った位置決め

    穴の「位置」を決める際は、第17回で学んだ「外部参照 (External Geometry)」を活用しましょう。ケースの底面のラインや、第23回で作った「基板固定ボス」の中心線を紫色の線として取り込み、そこからの距離で穴の位置を固定します。これにより、基板の高さが変わっても穴の位置が自動で追従するようになります。


    3. ケーブル干渉を防ぐ「座彫り」と薄肉化

    側面への穴あけで最も多い失敗は、「穴は開いているのに、ケーブルが奥まで刺さらない」というトラブルです。これは、ケースの壁が厚いために、ケーブルのプラスチック製コネクタ(持ち手)がケースの外壁にぶつかってしまうことが原因です。

    3-1. 座彫り(Counterbore)のテクニック

    もしケースの壁厚を2.0mm以上に設定している場合、そのままではコネクタが十分に届かないことがあります。これを解決するのが「座彫り」です。

    1. 内側を削る:ケースの内壁から、コネクタ周辺だけを 1.0mm ほど [ポケット] で薄く削ります。
    2. 外側を広げる:USBポートの穴の周囲を、ケーブルの持ち手が入るサイズ(例:幅15mm、高さ10mm)で、深さ 1.0mm ほど削り取ります。

    3-2. 薄肉化と強度のバランス

    コネクタ周りだけを 1.0mm 程度の厚さにすることで、ケーブルの確実な接続を保証しつつ、ケース全体の強度は維持できます。このとき、急激に壁を薄くすると3Dプリント時に強度が落ちるため、境界線に小さな [フィレット] をかけて滑らかに繋ぐのがプロの隠し技です。


    4. スライドスイッチ用開口のコツ

    USBポートとは異なり、スライドスイッチやタクトスイッチなどの「操作部」は、指の入りやすさを考慮しなければなりません。

    4-1. 操作スペース(ストローク)の確保

    スライドスイッチのつまみが出る穴を作る際、つまみの可動範囲ギリギリで穴を開けてしまうと、指がケースに当たってうまくスライドできません。 つまみの左右にプラス 2mm 程度のマージン(余白)を確保するのが、ストレスのない操作性を生むコツです。

    4-2. 面取りによるアクセスの向上

    スイッチ用の穴の縁には、広めの [面取り (Chamfer)] を施しましょう。これにより、指が穴の奥まで入りやすくなり、小さなスイッチでも確実に操作できるようになります。

    VB
    // スプレッドシートでの数式例
    switch_hole_w = switch_travel + switch_knob_w + (clearance * 2)

    上記のように、第20回で学んだスプレッドシートの変数を使って計算式を組んでおくと、スイッチの仕様が変わっても一瞬で修正可能です。


    5. 組み立てやすさを考慮したマージン

    側面穴の設計において最後に確認すべきは、「組み立て順序」です。側面に突き出しているコネクタがある場合、基板を真上から垂直に下ろして入れることはできません。

    5-1. 斜め挿し(Tilted Insertion)への対応

    基板を斜めに傾けて、まずコネクタを側面の穴に差し込んでから、反対側をパタンと下ろすような組み立てになります。このとき、穴の高さ方向のサイズがギリギリだと、傾けた時にコネクタが穴の縁に引っかかってしまいます。

    • 上下マージンの増加:穴の高さをコネクタ実寸より 1.5mm 〜 2.0mm ほど高く設定する。
    • U字型スリット:ケースの側面を「完全な穴」にするのではなく、上側が繋がっていない「U字の切り欠き」にすることで、基板を真上からスライドして入れることが可能になります。

    「FreeCAD 側面 穴あけ」を極めることは、単にモデルを削ることではなく、完成後の使い勝手と組み立ての儀式を想像することに他なりません。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:側面を選択してもスケッチボタンが押せない。
    A:その面が「完全な平面」ではない可能性があります。フィレット加工ですでに丸くなっている面などは選択できません。その場合は、データム平面を作成し、そこを基準にスケッチを描いてください。

    Q:穴を開けたのに、モデルの内側に穴が反映されない。
    A[ポケット] の設定で、削る方向が外側を向いている可能性があります。タスクパネルの [逆方向 (Reversed)] にチェックを入れて、内側に向かって削るように設定し直しましょう。


    6. まとめ

    今回は、実用的な電子工作ケースに欠かせない「側面の穴あけ加工」を学びました。

    • データム平面を使えば、どんな場所・角度でも自由に側面スケッチが描ける。
    • USB穴は、ケーブルの持ち手が当たらないよう座彫り(薄肉化)を考慮する。
    • スイッチ穴は操作ストローク指のアクセス性を考えて、大きめに面取りする。
    • 組み立て時の「斜め挿し」を想定し、上下のマージンを確保する。

    側面が加工できるようになったことで、あなたの設計するケースは「製品」としてのクオリティに一歩近づきました。

    次回は、ケースの「蓋(トップカバー)」がズレずにピタッとハマるための「リップ(インロー)構造」の作り方を解説します。カチッと閉まる高品質な嵌合をマスターしましょう!

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  • FreeCADで基板固定ボスを設計!インサートナットやネジ穴の作り方

    FreeCADで基板固定ボスを設計!インサートナットやネジ穴の作り方

    「基板をケースに入れたけど、中でカタカタ動いてしまう……」
    「ネジで固定しようとしたら、プラスチックの支柱が根元から折れてしまった!」
    「インサートナット用の穴って、何mmで設計するのが正解なの?」

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    電子工作のデバイスを完成させる最後の難関、それが「基板の確実な固定」です。ただ箱に入れるだけでは、ボタンを押した時に基板が逃げたり、端子が壊れたりする原因になります。

    本記事では、FreeCAD 1.0.2を使って、基板をネジ止めするための「ボス(支柱)」を設計する方法を解説します。正確な位置決めから、強度の高いネジ穴の作り方まで、実務で使える「基板固定 ボス 設計」のテクニックを網羅しました。

    この記事を読み終える頃には、あなたの作るケースは「ただの箱」から、本格的な「電子機器の筐体」へと進化しているはずです!


    1. ベースとなる箱形状の作成

    まずは、基板を収めるための「外箱」の底面から作っていきます。ここでは第21回でスプレッドシートに登録した変数(エイリアス)を活用し、後からサイズ変更が可能なパラメトリックな設計を行います。

    FreeCAD 1.0.2の [Part Design] ワークベンチでボディーを作成し、底面となるスケッチを描きましょう。この時、外寸は以下の計算式で定義するのがコツです。

    • 横幅:基板幅 + (クリアランス × 2) + (壁の厚み × 2)
    • 縦幅:基板奥行 + (クリアランス × 2) + (壁の厚み × 2)

    このように数式で管理することで、基板のサイズや3Dプリンターの精度(クリアランス)が変わっても、一瞬で箱のサイズを修正できるようになります。


    2. 採寸データに基づき基板配置を決める

    次に、箱の中のどこに基板を固定するか、「ボスの中心位置」を決定します。ここで活躍するのが「外部参照」の機能です。

    第21回でノギスを使って測った「基板の端からネジ穴までの距離」を正確に入力します。ケースの内側のカドを参照線(マゼンタ色の線)として取り込み、そこからの距離でボスの位置を固定しましょう。

    FreeCAD 1.0.2では、スケッチ内で [点を作成] ツールを使い、それぞれの点に座標を割り当てるのが最も効率的です。この「点」が、後に作成する円柱(ボス)の中心点になります。


    3. ネジ留め用「ボス(支柱)」の設計テクニック

    ボスは基板を支える重要な柱です。細すぎるとネジを締めた際に割れてしまい、太すぎると基板上の他の部品に干渉してしまいます。

    ボスの外径と高さの目安

    一般的に、M3ネジ(直径3mm)を使用する場合、ボスの外径は 6.0mm 〜 7.0mm 程度に設計します。肉厚が片側1.5mm以上あると、3Dプリント品としての強度が安定します。

    高さについては、基板裏面のハンダの飛び出し(ツノ)がケースの底に当たらないよう、3.0mm 〜 5.0mm 程度浮かせるのが理想的です。これもスプレッドシートの変数 boss_h などで管理しましょう。

    💡 プロの知恵:根元の補強
    ボスの根元には必ず [フィレット] をかけましょう。ほんの 0.5mm 程度の丸みをつけるだけで、応力集中が分散され、ボスの折れ強度が劇的に向上します。


    4. 直接ネジ止め vs インサートナット

    ボスの中心に開ける「穴」の設計は、固定方法によって数値が全く異なります。ここが「基板固定 ボス 設計」で最も注意すべきポイントです。

    固定方法設計穴径(M3用目安)特徴
    セルフタッピング2.6mm 〜 2.8mmプラスチックに直接ネジを切り込む。簡単だが、何度も開け閉めするとネジ山が潰れる。
    インサートナット4.0mm 〜 4.2mm真鍮製のナットを熱で圧入する。耐久性が非常に高く、プロのプロトタイプ品質になる。

    FreeCAD 1.0.2では、ボスの上面にスケッチを描き、[ポケット] 機能で穴を開けます。深さは、ネジの長さ(例:6mm)に対して1mmほど余裕を持たせた設計にしてください。


    5. 配線の逃げと底面リブの追加

    基板が固定できても、配線が壁に挟まって断線しては意味がありません。最後の仕上げとして、中身の環境を整えましょう。

    • 配線逃げの設計:基板の端とケースの壁の間に、コネクタやワイヤーが通るスペースを確保します。必要であれば、ケースの壁の一部を [ポケット] で切り欠きます。
    • 底面リブ(補強板):ケースが大きい場合、底面がたわむことがあります。ボス同士を繋ぐように高さ1mm程度の細い壁(リブ)を立てることで、ケース全体の剛性を高めることができます。

    これらすべてを [Part Design] の中で完結させることで、機能的で美しいケースが完成に近づきます。


    よくあるトラブルと解決策

    Q:ボスの位置がズレて基板の穴に入らない!
    A:ノギスで測った「基板の角」と、FreeCADで設定した「基準点」が一致しているか再確認しましょう。また、3Dプリンターの誤差を吸収するために、ボスの穴径ではなく「基板のネジ位置」そのものに 0.2mm 程度の遊び(ルーズホール)を設計に持たせるのも有効です。

    Q:ネジを締めたらボスが縦に割れてしまった……
    A:3Dプリントの積層方向に注意が必要です。ボスは垂直に積み上がるため、横方向の力には強いですが、中から押し広げる力には弱いです。壁の厚みを増やすか、スライサー設定で「壁のライン数(ウォールカウント)」を増やして、ボスが100%充填されるように設定してみてください。


    5. まとめ

    今回は、ケース設計の心臓部である「基板固定ボス」の設計について学びました。

    • 外箱のサイズはスプレッドシートの変数を使って、クリアランス込みで算出する。
    • ボスの配置は外部参照を使い、基板の正確な座標データに基づき決定する。
    • 固定方法(直接 or ナット)に合わせて、穴径を 0.1mm 単位で調整する。
    • 根元のフィレットが、実用強度を出すためのプロの隠し技。

    これで、基板がしっかりと安定して収まる「ボトムケース」の土台が完成しました。

    次回は、今回作ったケースの横壁に「USBポートやスイッチ用の穴」を開ける方法を解説します。斜めの面や側面に正確な穴を開けるための「データム平面」の使い方をマスターしましょう!

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  • 3Dプリンターの公差設計!部品が入らないを防ぐクリアランスの考え方

    3Dプリンターの公差設計!部品が入らないを防ぐクリアランスの考え方

    FreeCAD
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    「設計図通りに50mmの箱と、50mmの蓋を作ったのに、キツすぎて全然ハマらない!」
    「ネジを通す穴を3mmで開けたのに、ネジが入らない……」
    「3Dプリンターの精度ってそんなに悪いの?」

    3Dプリンターを使い始めて誰もが一度は経験する、この「入らない・ハマらない」問題。実はこれ、プリンターの故障ではなく、設計段階での「公差(こうさ)」や「クリアランス(隙間)」の考慮が足りないことが原因です。

    3Dプリンターは樹脂を溶かして積み上げる性質上、どうしても数パーセントの「縮み」や、樹脂が外側に広がる「太り」が発生します。これを無視してピッタリの数値で設計してしまうと、現物同士は絶対に組み合いません。

    この記事では、初心者設計者が必ず身につけるべきクリアランスの黄金ルールを解説します。FreeCAD 1.0.2を使った具体的な設定方法も紹介するので、今日から「一発でピッタリ組み上がる設計」ができるようになりましょう!


    1. なぜ「ピッタリ」で作ると入らないのか

    機械設計の世界には「ゼロ公差」というものは存在しません。どんなに精密な加工機でも必ずわずかな誤差が生じます。特に家庭用の3Dプリンター(FDM方式)は、以下の理由で「設計図の数値と実物の数値」に差が出やすい道具です。

    物理的な限界

    例えば、ノズルから出たばかりのドロドロに溶けたプラスチックを想像してください。これを積み上げていく際、重力や積層の圧力によって、樹脂は設計上のラインよりもわずかに外側へ押し出されます。これが「造形太り」です。

    「クリアランス」の重要性

    部品同士を組み合わせる(嵌合:かんごう)ためには、意図的に設ける隙間である「クリアランス」が不可欠です。クリアランスは、単なる「誤差の余裕」ではなく、スムーズに動かすため、あるいは確実に固定するための「設計意図」そのものなのです。


    2. 3Dプリンターの特性(熱収縮と造形太り)

    設計に数値を反映させる前に、なぜサイズが変わってしまうのか、その正体を知っておきましょう。主な要因は2つです。

    ① 造形太り(Extrusion Width)

    ノズルから出た樹脂が潰れて広がる現象です。これにより、「外形は大きく、内径(穴)は小さく」なりがちです。

    • 直方体の外側は、設計より片側0.1mm〜0.2mm程度大きくなる。
    • 丸い穴の内側は、設計より0.2mm〜0.4mm程度小さくなる。

    特に「穴」が小さくなりやすい点には注意が必要です。

    ② 熱収縮(Thermal Shrinkage)

    樹脂は冷めると縮みます。PLA樹脂は比較的収縮が少ないですが、ABS樹脂などは大きく縮むため、大きな部品ほど全体的にサイズが小さくなる傾向があります。

    💡 ヒント:一層目の広がり(象の足)
    ベッドに定着させるために一層目を押し付ける設定にしていると、底面だけが横に大きく広がります。これを「エレファントフット」と呼び、嵌合を妨げる最大の原因の一つになります。


    3. 部位別おすすめクリアランス値(穴、蓋、可動部)

    「じゃあ、具体的に何mmの隙間を開ければいいの?」という疑問にお答えします。一般的な家庭用3Dプリンター(ノズル径0.4mm)を使用する場合の目安表です。

    嵌合の種類クリアランス(片側)特徴・用途
    圧入(きつい)0.05 mm 〜 0.1 mmハンマーで叩き込む、または万力で押し込む。二度と外さない場所に。
    しっかり(はめ殺し)0.15 mm 〜 0.2 mm手でギュッと押し込むと入り、簡単には抜けない。ケースの蓋などに最適。
    スムーズ(スライド)0.3 mm 〜 0.4 mm引っかかりなく抜き差しできる。電池蓋やスイッチのボタンなど。
    ボルト穴(逃げ穴)0.2 mm 〜 0.5 mmM3ネジを通すなら、穴径は3.2mm〜3.5mmで設計するのが定石。

    ※上記は「片側」の数値です。例えば、幅20mmの箱に蓋を入れる場合、両側にクリアランスを設けるため、蓋の幅は 20mm - (0.2mm * 2) = 19.6mm となります。


    4. オフセット機能を使ったクリアランスの作り方

    FreeCAD 1.0.2でクリアランスを設定する際、毎回引き算をして寸法を入力するのは面倒ですよね。そこで便利なのが、第20回で学んだ「スプレッドシート」と、Sketcherの「オフセット」ツールの組み合わせです。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. スプレッドシートに gap という名前で、クリアランス値(例:0.2)を入力しておきます。
    2. スケッチを開き、[外部形状へのリンクを作成] で本体の縁を取り込みます(紫色の線)。
    3. ツールバーの [オフセットを作成] (1.0.2の新アイコン:線が二重になっているマーク)をクリックします。
    4. 作成された線の寸法拘束を開き、数式エディタ [f(x)] に Spreadsheet.gap と入力します。

    この方法なら、後から「もう少し緩くしたい」と思った時に、スプレッドシートの数値を「0.3」に変えるだけで、モデル全体の隙間が自動で調整されます。これがプロのパラメトリック設計です。


    5. テストピース印刷のすすめ

    どれだけ理屈を学んでも、最終的な正解は「あなたのプリンターとフィラメントの組み合わせ」の中にしかありません。いきなり大きなケースを印刷して失敗すると、時間も材料ももったいないですよね。

    そこで、本番前に小さなテストピース(キャリブレーションモデル)を印刷することを強くおすすめします。

    テストすべき項目

    • 穴径テスト:3.0mm, 3.1mm, 3.2mm… と少しずつ違う穴を並べ、ネジがどれにハマるか確認する。
    • 嵌合テスト:0.1mmから0.4mmまで、隙間を変えたジョイントを印刷してみる。

    一度自分の環境の「クセ」を数値化してメモしておけば、今後の設計効率は飛躍的に向上し、設計ミスによる「ゴミの山」を資産に変えることができます。


    6. まとめ

    今回は、3Dプリントを成功させるための心臓部「公差とクリアランス」について学びました。

    • FDM方式の3Dプリンターには「造形太り」があるため、ピッタリ設計は禁物。
    • 確実にハメるなら、片側 0.2mm のクリアランスが基本。
    • FreeCADのスプレッドシートとオフセット機能を使い、隙間を数値管理する。
    • 自分の環境を知るためのテストピース印刷が、結局一番の近道。

    「隙間」をコントロールできるようになれば、3Dプリンターは単なる形を作る道具から、カチッと組み上がる「製品」を作るマシンに進化します。

    次回は、いよいよケース設計の核心へ!基板をケースに固定するための「ボス(支柱)の設計」と、インサートナット・ネジ穴の作り方を解説します。お楽しみに!

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  • 電子工作ケースを自作しよう!FreeCAD設計の企画とノギス採寸術

    電子工作ケースを自作しよう!FreeCAD設計の企画とノギス採寸術

    FreeCAD
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    「自分だけのオリジナルデバイスを作ったけれど、基板がむき出しで格好悪い……」
    「既製品のケースを買ったけれど、コネクタの位置が合わなくて加工に失敗した」
    「FreeCADでケースを設計したいけれど、何から手をつければいいのかわからない」

    全40回の連載もいよいよ後半戦。第21回からは、本講座の集大成となる「オリジナル電子工作ケース」の設計プロジェクトがスタートします!

    「電子工作 ケース 設計」において最も重要なのは、きれいな3Dモデルを描くことではありません。中に入れる基板や部品を「正しく採寸し、ゆとりを持った設計をする」ことです。ここをおろそかにすると、何時間もかけて印刷した後に「部品が入らない……」という悲劇を招くことになります。

    今回は、設計の成功を左右する「企画」と「採寸(サイスン)」、そして前回学んだ「スプレッドシートへの変数登録」までを解説します。プロのワークフローを身につけて、確実にハマるケース作りを目指しましょう!


    1. プロジェクト始動:作るケースの仕様を決める

    いきなりFreeCADを起動する前に、まずは「どのようなケースにしたいのか」という要件定義を行いましょう。趣味の工作だからこそ、自分の理想を詰め込むことができます。

    検討すべきポイント

    • メンテナンス性:電池交換はしやすいか? 蓋はネジ止めにするか、パチンとはめるスナップフィットにするか?
    • インターフェース:USBポート、スイッチ、液晶画面、LEDなどはどこに配置するか?
    • 堅牢性:持ち歩くものか、机に置いておくものか?(それによって壁の厚みを決めます)
    • 放熱:熱を持つ部品(モータードライバや電力変換器など)がある場合、通気口は必要か?

    今回は「ArduinoやRaspberry Pi Picoなどのマイコン基板を収納し、USBケーブルが外から挿せる蓋付きケース」を想定して進めていきます。


    2. 失敗しないための「ラフスケッチ」の重要性

    プロの設計者ほど、CADに向かう前に紙とペンでラフスケッチを書きます。なぜなら、CAD上では「細部の修正」に意識を奪われ、全体のバランスを見失いやすいからです。

    ラフスケッチに書くべきこと

    1. 大まかな外観(箱の形、蓋の合わせ目の位置)
    2. 基板の向き(コネクタがどちらを向くか)
    3. 基準点(原点)の決定(基板の左上の角を(0,0)にする、など)

    この段階で「ここを基準に寸法を測る」と決めておくと、後のCAD作業が格段にスムーズになります。


    3. 必須ツール「デジタルノギス」の正しい使い方

    「電子工作 ケース 設計」における最強の相棒、それがデジタルノギスです。定規では測りきれない0.1mm単位の誤差が、3Dプリントでは大きな違いとなって現れます。

    ノギスの4つの測定機能

    測定方法測れるもの
    外側測定基板の幅、長さ、厚み、部品の外径。
    内側測定既成ケースの内径や、穴の直径。
    深さ測定穴の深さや、段差の深さ。
    段差測定基板上の背の高い部品の高さ。

    💡 ヒント / 注意点
    基板の角にある「取り付け穴」を測る際、穴の端から端までを測るよりも、一度ノギスをリセット(ZERO設定)して比較測量する「比較測定」を使うと精度が上がります。


    4. 基板の穴位置とコネクタ位置の採寸

    ケース設計で最も失敗しやすいのが、基板を固定するネジ穴と、側面のUSBコネクタ位置のズレです。

    正確な座標の取り方

    基板の「左上の角」を基準点とした場合、以下の数値を記録します。

    • 基板の外形:縦(H) × 横(W) × 厚み(T)
    • ネジ穴の中心座標:基準点から穴の中心まで、X方向に何mm、Y方向に何mmか。
    • コネクタの位置:基板の端から、コネクタの左右端まで何mm、基板面からコネクタの高さは何mmか。

    これらをすべて「1.0.2のスプレッドシート」で管理することで、後からマイコン基板の種類が変わっても数値を打ち替えるだけでケースの形状を修正できるようになります。


    5. スレプレッドシートへの変数登録

    採寸が終わったら、FreeCAD 1.0.2を起動して、第20回で学んだ「Spreadsheetワークベンチ」に変数を入力しましょう。

    手順解説 (Step-by-Step)

    1. FreeCADで [Spreadsheet] ワークベンチを開き、新しいシートを作成。
    2. 以下のエイリアス名(名前)と数値を設定します。
      • pcb_w:基板の横幅
      • pcb_l:基板の縦幅
      • wall_t:ケースの肉厚(1.6mm〜2.0mm推奨)
      • clearance:ゆとり(0.2mm〜0.5mm推奨)
    3. 各セルの [右クリック] > [プロパティ] > [エイリアス] から名前を付け、セルが黄色くなることを確認します。

    💡 ヒント / 注意点
    ここで clearance(クリアランス)という変数を設けるのがミソです。3Dプリンターの精度には個体差があるため、この数値を後から調整するだけで「ゆるめ」や「きつめ」を一括変更できます。


    よくあるトラブルと解決策

    • 誤差の累積:基板の角から順番に部品を測ると、少しずつズレが溜まっていきます。必ず「単一の基準点」からの距離を測るようにしましょう。
    • コネクタの出っ張り忘れ:USBポートやスイッチは、基板の縁よりも少しだけ外に飛び出していることがあります。この「飛び出し分」を測り忘れると、ケースの壁にぶつかって基板が入らなくなります。

    6. まとめ

    今回は、ケース設計の第一歩となる「企画」と「正確な採寸」について学びました。

    • 設計の前に要件(電池交換、ポート位置など)を整理する。
    • CADの前にラフスケッチを書き、基準点を決める。
    • デジタルノギスの機能を使い分け、0.1mm単位で部品を測る。
    • 採寸したデータをスプレッドシートに変数として登録する。

    これで、失敗しないための完璧な「下準備」が整いました!

    次回は、3Dプリンターならではの重要知識、「公差(クリアランス)」の考え方を深掘りします。なぜ設計図通りに作ると部品が入らないのか? その理由と対策を徹底解説します。

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