ネジ不要の固定!3Dプリンター向けスナップフィット設計の理論

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「ケースの蓋をネジで止めるのは面倒だし、見た目もスマートじゃない……」
「市販のリモコンみたいに、パチンとはまる蓋を作りたい!」
「自作のツメを作ってみたけど、一回はめただけでポッキリ折れてしまった」

3Dプリンター(FDM方式)でのモノづくりにおいて、最もエンジニアの腕の見せ所となるのが、この「スナップフィット設計」です。ネジや接着剤を使わず、樹脂自体の「しなり」を利用して固定するこの仕組みは、部品点数を減らすだけでなく、製品としての完成度を劇的に高めてくれます。

しかし、3Dプリンターで出力するスナップフィットには、金型で作る工業製品とは異なる「特有のルール」が存在します。このルールを知らずに設計すると、積層の剥離で簡単に折れたり、一度はめたら二度と外れなかったりといった失敗を招きます。

この記事では、最新のFreeCAD 1.0.2で実装する前段階として、絶対に知っておくべき「折れない・外れない・心地よい」スナップフィットの設計理論を徹底解説します。


1. スナップフィットの仕組みとメリット

スナップフィットとは、部品の一部を一時的に弾性変形(しならせる)させ、相手側の凹凸にパチンとはめ込む固定方法です。電池蓋やペンのキャップなど、身の回りのプラスチック製品の多くに採用されています。

3Dプリンターでこの構造を採用するメリットは以下の通りです。

  • 部品コストの削減:ネジやナットを買う必要がなくなります。
  • 組立の効率化:工具なしで、一瞬で組み立て・分解ができます。
  • デザインの洗練:外側にネジ頭が見えないため、見た目が非常にすっきりします。

ただし、FDM方式の3Dプリンターで使う「PLA」や「PETG」は、金属ほど柔軟ではありません。材料の特性を理解し、無理な力がかからない形状を設計することが成功の鍵となります。


2. 3Dプリンター向け形状(積層方向の考慮)

3Dプリンターでスナップフィットを設計する際、最も重要なのが「積層方向」です。どんなに計算が正しくても、プリントの向きが悪いとツメは一瞬で折れます。

積層面は「弱点」である

3Dプリント品は、層と層の接着面が最も脆くなります。ツメを「垂直」に立てて印刷すると、しなる力が加わった際、層の間から剥がれるようにポッキリと折れます(層間剥離)。

折れないための配置ルール

  • 繊維の向きを揃える:ツメの長さ方向がプリントの横方向(X-Y平面)になるように配置すると、樹脂の「糸」が途切れずに繋がるため、非常に強靭になります。
  • フィレットによる補強:ツメの根元には必ず [フィレット] をかけましょう。角を丸めるだけで、力が一点に集中(応力集中)するのを防ぎ、折れるリスクを大幅に下げられます。

3. 必要な「しなり量」とアームの長さ

スナップフィットの基本は「カンチレバー(片持ち梁)」という構造です。この「アームの長さ」と「ツメの高さ」には、黄金比が存在します。

「長く、しなやかに」作る

樹脂を折らずにしならせるためには、十分な長さが必要です。 一般的なPLA樹脂の場合、「アームの長さは、ツメの高さの10倍以上」にするのが安全圏です。例えば、0.5mmの引っかかりを作りたいなら、しなる部分は5mm以上の長さを確保します。

工学的な詳細を知りたい方は、樹脂メーカーの技術資料などを参考にしてください。


4. カンチレバー(片持ち梁)型の設計手順

FreeCAD 1.0.2で設計する際は、以下の3つの要素を意識してスケッチを描きます。

① 進入角(挿入しやすさ)

ツメが当たる瞬間の斜面の角度です。通常は 30度〜45度 に設定します。角度を緩くするほど、軽い力で「パチン」とはまります。

② 保持角(抜けにくさ)

はまった後の、戻る側の角度です。

  • 外したくない場合:90度(直角)にします。
  • メンテナンスで外したい場合:45度程度に設定すれば、引っ張ることで再びしなりが発生し、外すことができます。

③ アームのテーパー

アーム(支柱)の厚みを、根元を太く、先端を細くする「テーパー形状」にすると、負荷が全体に分散されるため、より折れにくくなります。FreeCADのスプレッドシートでこれらの数値を管理すると、微調整が非常に楽になります。


5. 失敗しないためのアンダーカット対策

3Dプリンターには「アンダーカット(逆勾配)」に弱いという特性があります。スナップフィットのツメ部分は、まさに空中に浮いた形状になりがちです。

サポート材を使わない工夫

スナップフィットの中にサポート材が入り込んでしまうと、除去が非常に困難になり、ツメが動かなくなります。これを避けるためには、「45度ルール」を適用します。

ツメの突き出し部分を直角にせず、下側を45度の斜面にします。FreeCAD 1.0.2なら、スケッチ内で [角度拘束] を使って 45度を指定するだけで、サポート不要で綺麗に印刷できるツメが完成します。


よくあるトラブルと解決策

Q:ツメが硬すぎて、はめようとすると折れてしまう

A:アームが短すぎるか、厚みが厚すぎます。FreeCADのスプレッドシートでアームの長さを 2mm ほど長くするか、厚みを 0.2mm 薄くして「しなり」を大きくしましょう。

Q:プリント後にツメが固着して動かない

A:クリアランス(隙間)が足りません。アームとケース壁面の間に、少なくとも 0.3mm 〜 0.4mm の隙間を設けるように設計を見直してください。


5. まとめ

  • スナップフィットは樹脂の弾性を利用した、ネジ不要のスマートな固定法。
  • 積層方向を「繊維が繋がる向き」に配置するのが折れないための鉄則。
  • アームの長さを十分に確保し(ツメ高さの10倍)、根元をフィレットで補強する。
  • 45度の斜面を設けることで、サポート材なしの綺麗な出力を実現する。

理論が分かれば、あとは形にするだけです。理論に基づいた設計は、あなたの作品を「壊れにくい一生モノの資産」に変えてくれます。

次回は、いよいよFreeCAD 1.0.2を操作して、実際に「パチンと閉まるスナップフィット付きの蓋」をモデリングします。今回の理論をどう図面に落とし込むのか、じっくり解説します。お楽しみに!

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