
「設計が終わった後に『やっぱり幅を5mm広くして』と言われて絶望した……」
「1つの数字を変えるために、何十個ものスケッチを開き直すのはもう限界」
「Excelのように数値を一括で管理する方法はないの?」
FreeCADの習得もいよいよ中盤、第20回を迎えました。ここまでの知識で形を作ることはできるようになりましたが、実務や本格的なモノづくりにおいて最も大切なのは「修正のしやすさ」です。
今回紹介する「スプレッドシート(Spreadsheet)連携」は、FreeCADをただの3Dお絵描きソフトから、プロ仕様の強力な設計ツールへと変貌させる魔法の機能です。数値を一つ書き換えるだけで、モデル全体のサイズが自動的に追従する「パラメトリック設計」の世界へ足を踏み入れましょう。
目次
1. パラメトリック設計の真骨頂

パラメトリック設計とは、図形の形状を直接決めるのではなく、「変数(パラメーター)」という媒介を通してコントロールする手法のことです。
例えば、これまではスケッチの寸法拘束に直接「50mm」と打ち込んでいました。これを「幅」という名前の変数に置き換え、別の場所(スプレッドシート)で「幅=50」と定義します。
なぜスプレッドシートを使うのか?
- 一括変更が可能:複数のパーツで共通して使っている数値(板厚やネジ穴径など)を一度に直せます。
- ミスが減る:あちこちのスケッチに同じ数値を手入力する手間が省け、入力ミスを防止できます。
- バリエーション展開:数値を書き換えるだけで「Sサイズ」「Lサイズ」といった展開が一瞬で完了します。
これこそが、将来的にスキルを資産化し、効率的に設計を進めるための必須テクニックです。
2. Spreadsheetワークベンチの基本操作

まずは、FreeCAD 1.0.2の中で「表」を作成する準備をしましょう。
手順解説 (Step-by-Step)
- ワークベンチのプルダウンメニューから [Spreadsheet] を選択します。
- ツールバーにある [新しいスプレッドシートを作成] アイコン(表のようなマーク)をクリックします。
- モデルツリーに「Spreadsheet」という項目が追加されるので、これをダブルクリックして開きます。
- Excelのようなセルが表示されます。ここに「項目名(名前)」と「数値」を並べて入力していきます。
💡 ヒント / 注意点
A列に「Width(幅)」、B列に「50」といった形で入力するのが一般的です。ただし、これだけではまだモデルと連携できません。次に解説する「エイリアス」の設定が必要です。
3. 変数(Alias)の設定と呼び出し方

FreeCADが数値を認識するためには、各セルに「エイリアス(別名)」というニックネームを付ける必要があります。
手順解説 (Step-by-Step)
- 数値を入力したセル(例:B1セル)を右クリックし、[プロパティ…] を選択します。
- 表示されたダイアログの [エイリアス] タブをクリックします。
- 「エイリアス」の入力欄に、分かりやすい名前を付けます(例:
width)。 - [OK] を押すと、そのセルの背景が黄色に変わります。これが「変数として登録された」合図です。
💡 1.0.2のポイント
エイリアス名には日本語を使わず、英数字で付けるのがエラーを防ぐコツです。また、数字から始まる名前やスペースを含む名前は使えません。
4. スケッチ寸法とスプレッドシートの紐付け

いよいよ、スプレッドシートの数値をスケッチの寸法に反映させます。
手順解説 (Step-by-Step)
- モデリング用のスケッチを開き、寸法拘束を与えたい線を選択します。
- 寸法入力の画面で、入力欄の右端にある [青い円のアイコン (f(x)マーク)] をクリックします。
- 「数式エディタ (Formula editor)」が開きます。
- 入力欄に
Spreadsheet.エイリアス名と入力します(例:Spreadsheet.width)。 - 入力の途中で候補が表示されるので、それを選択するのが確実です。最後に [OK] を押します。
これで、寸法値の横に青いチェックマークが付き、スプレッドシートの数値が反映されます。スプレッドシートに戻って数値を書き換えてみてください。3Dモデルの形がリアルタイムで変わるはずです!
5. ケース設計に役立つ「クリアランス変数」

スプレッドシート連携が最も威力を発揮するのが、次回以降に挑戦する「ケース設計」です。特に「クリアランス(隙間)」の管理に役立ちます。
推奨される変数リスト
| エイリアス名 | 意味 | 活用方法 |
|---|---|---|
thick | 板厚 | ケースの壁の厚みをすべてこれで管理する。 |
gap | 隙間 | 3Dプリンターの精度に合わせて、蓋と本体の隙間(0.2mmなど)を一括調整する。 |
hole_d | 穴径 | ネジ穴の大きさを一斉に変更する。 |
例えば、Spreadsheet.width + (Spreadsheet.gap * 2) のように数式エディタ内で計算させることも可能です。これにより、「本体のサイズを変えたら、蓋のサイズも自動で適切な隙間を保ったまま大きくなる」という完璧な連動が実現します。
よくあるトラブルと解決策
Q:数式エディタで「Spreadsheet」と打っても候補が出ない
A:スプレッドシートの名前(ラベル)が「Spreadsheet」以外になっていませんか?モデルツリーで表示されている名前を正確に入力する必要があります。また、エイリアス設定(黄色の背景)が正しく完了しているか確認してください。
Q:数値を大きくしたらモデルが壊れた!
A:これは「拘束」が不完全な場合によく起こります。モデルを動かす前に、スケッチがしっかり「完全拘束(緑色)」になっていることを確認しましょう。骨組みがしっかりしていれば、サイズ変更にも耐えられます。
5. まとめ
今回は、設計の効率と精度を飛躍的に高める「スプレッドシート連携」を解説しました。
- スプレッドシートは、設計図の数値を一括管理する司令塔。
- エイリアス(Alias)を設定して、セルに名前を付ける。
- 数式エディタ [f(x)] を使って、モデルと数値を紐付ける。
- パラメトリック設計を導入すれば、後からの修正も怖くない。
ここまで学んだあなたは、もう単なる「形を作れる人」ではなく、「意図を持って設計できる人」へと進化しました。
次回からは、この連載の集大成となる「オリジナル電子工作ケースの設計」プロジェクトが始まります!まずは企画と、正確な設計の要となる「ノギスを使った採寸術」からスタートしましょう。お楽しみに!
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※本ブログはこの一文以外は、AIによる記載です。内容にウソが含まれている可能性がありますので、ご注意ください。写真もAIで作成しています。
探偵はいつも迷子ですw